305系

RM MODELS ネコパブリッシング刊「RM MODELS」240(2015年8月)号 掲載作品

実物情報

筑肥線~福岡市地下鉄空港線直通用として用いられていた103系1500番台の置き換え用として登場。日立製作所のA-trainプラットフォームを採用し、国内各社で採用実績のある既存の車体形状を流用することで設計面でのコストダウンが図られた。

外観は817系増備車に続いて白色ベースとなり、近年のJR九州ではおなじみの「CT」ロゴを中心としたレタリングが配されている。

半自動ドアスイッチの設置、主電動機にPMSM方式を採用、軸梁式台車など、JR九州としては初採用(PMSMはJRグループ全体の量産車でも初)となる仕様も多い。

製作記事

A-train狭幅4ドア車体ということで、東京メトロ車や東武50000系列などに類似の車体ではあるが、ドア上水切りやドア窓形状など独自性も多く、既存製品の流用ではなく専用車体を起こしたい作例だった。そのため、当方作例では実験などをのぞいて初の本格採用となる、3Dプリントによる車体設計を実施することにした。

3Dプリントによる車体設計についてはそれの説明だけで長くなってしまう上、305系に限ったものではなく、本作例掲載誌にてある程度の解説を行っていることから、詳細な説明はそちらに譲ることとし、設計上の注意点をまとめておきたい。


3D CADソフトウェア「Rhinoceros」にて設計を行った。完成状態をモデリングしたのち、最終的には板キット形状として出力している。画像はクリックで拡大。

既存部品の可能な限りの流用

車体・床下は専用に設計したものの、それ以外の部分については既存パーツの利用が可能な点も多い。本作例においては、クーラーにKATOの東京メトロ16000系用、屋上換気装置のGMの東武50000系列用、パンタグラフにTOMIXのC-PS27、JR無線アンテナ・台車・妻面幌にKATOのE233系用、動力ユニットに鉄道コレクション用の部品を、それぞれ採用した。

3Dプリントで設計したのは車体、前面、トレーラー床板、床下機器となる。台車固定にはKATOのビス留め式台車マウント構造、カプラーにはTNカプラーの取り付け構造をそのまま他製品から模写し、床下機器もトレーラー用はGMのエコノミーキット用の設計寸法を、動力車用は鉄コレ床下機器の設計寸法を、それぞれノギス等で計測してそのまま採用している。

福岡市地下鉄無線アンテナ類は、設計時には実物資料もそれほど揃っていなかったことから、マイクロエースの303系のものを計測し再現した。

エッチングパーツの利用

3Dプリント素材の特性として、表面に若干の荒れを生じるため、表面の磨き処理が作例の仕上がりを左右する。しかしながら、前面を設計するにあたっては、枠の内側にはヤスリ類を届かせにくく、磨き上げが難しい。そのため、前面内側の平らな部分を、エッチングパーツとして別途設計し、塗装後にハメ込む構造を採用した。

側面ガラスはアクリル削り出し

側面ガラスは車体の3Dデータを元に設計したのち、3D切削器「iModela」を用いて透明アクリル素材からの削り出しを行い、はめこみ式とした。


アクリル板から削り出したガラスの例(写真は別作例のもの)

下地処理

3Dプリントの下地処理は、台所用油落とし洗剤「マジックリン」に1晩程度漬け込んで表面および染みこんだ脂分を除去したのち、超音波洗浄機で入念に洗浄。組み立てを行ってから塗装前の下地処理を行う。

下地には「ミッチャクロン」(OEM品が「ガイアノーツマルチプライマー」)などの強力プライマーを用いるか、3Dプリントへの食いつきが良好な「造形村GKサーフェーサー」を直接吹き付けるのがいまのところ良好な結果を見せている。

特にGKサーフェーサーは塗膜の厚みがあり、3Dプリント特有の表面の荒れをある程度埋めてくれるという効果も認められる(逆にいえば細かすぎるモールドは潰れてしまうので注意)。

塗装と仕上げ

305系の塗装自体はシンプルで、車体は白(ガイアノーツEXホワイト)単色、屋根は「Farbe」の「ねずみ色」、前面内側や床下などは黒とした。

塗装後の仕上げとして、おなじみのMDプリンタ製自作デカール・インクジェットプリンタ製行先ステッカー類により装飾を行い、クリアコートを行った。

最後に削り出しの側面ガラスや外付けパーツ類を取り付け、前面ガラスは塩ビ板を切り出したものをハメ込んで完成となった。

作品写真

奥付

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