鉄コレ/TOMIX動力をコアレスモーター化する

はじめに

2000年代から2010年代後半くらいまでのTOMIX製品の動力に採用されていたM-9モーターは、ブラシ部分の劣化(諸説あり)による動作不良が問題視されていた。また、型番は明確になっていないものの、鉄道コレクション用動力ユニットにおいても似たような問題が報告されている。

ユーザー界隈ではこの問題に対し、後発改良品であるM-13モーターに交換したり、IMONから発売されている寸法互換のミニモーターに換装することで性能向上を図ることが広く行われていた。

そんな折、AliExpressで12V駆動の小型コアレスモーターを比較的安価で発見した。グリーンマックス製品でも採用されたように、鉄道模型動力におけるコアレスモーターの性能の高さには定評がある。そこで、これを換装用モーターとして採用できないか実験してみることにした。

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事前準備

上:鉄コレ動力、下:TOMIX動力(323系用)、2枚目:鉄コレ動力から取り外したモーター部。使われているモーターは同じ寸法規格のもので、フライホイールやプラスチック製のカバー兼スペーサー(および集電バネ)の形状は異なる。

こちらがAliExpressで入手したコアレスモーター。軸径1mm、本体径8mm、本体長16mm、回転数18000RPM、電圧12Vというスペック。複数のディーラーから出品されているようで、1個あたり350~400円程度(ディーラーや在庫状況などにより多少変動)となっている。

フライホイールはモーター軸に圧入されているので、換装して組み戻した際にどのくらいの距離にしてあればよいのか、事前に計測しておく。

モーター部の分解

鉄コレとTOMIXではモーター組の部品構成は異なるが、おおまかな構造は同じで、分解方法についてはほぼ共通となっている。

まずフライホイールからシャフト受けのプラパーツを取り出す。

当方では少々乱暴だが、ギザギザ付きのラジオペンチを使って引っ張り出している。パーツを傷めないように注意。

続いてフライホイールを、1mm軸に対応したピニオンプーラー(Amazon等で取り扱いあり)を用いて取り外す。失敗するとプーラーピンを折損したり、フライホイールが食い込んで外せなくなったりするので、作業は慎重に行うこと。

まず始めに少し太めのピンを使い、フライホイール内部に出っ張っているモーター軸を奥まで押し込み、次に1mmピンで取り外しを行う。中心がきちんと合っていれば軽い力でプーラーを回すだけで取り外せるはずなので、プーラーが簡単に回せないほどの堅さになった場合、中心ピンがずれている可能性が高い。

TOMIX M-9モーター組を分解するとこんな感じ(上の青い部品が付いたモーターは比較用に用意したM-13)。透明軟質プラのカバーで寸法が調整され、ダイキャストに納まるようになっている。

アダプターパーツの設計・出力

元のモーターとコアレスモーターでは、軸径こそ同じだが本体寸法は異なる。そこで、コアレスモーターに被せ、元のモーター組と同じ形状になるようなスペーサーアダプターを、3Dプリントで開発することにした。

なお、集電スプリングについては元のように再現することが難しいため、リード線で配線するようにした。当方ではDCCを採用しており、いずれにせよデコーダーの配線が必要という理由もある。

鉄コレ用のモーターアダプター。両端からモーターを押さえ込むようにするため、2分割形状とした。

TOMIX用のモーターアダプター。上面に彫った溝はリード線を逃がすためのもの。

設計したアダプターは家庭用光造形式3Dプリンター「Phrozen Sonic Mini」と、SK本舗製「水洗いレジン」を使って出力した。小さな部品なので、出力所要も2時間かからない。

組み立て

鉄コレ用はコアレスモーターは無加工で済んだが、TOMIX用ではコアレスモーターの軸が元モーターに比べて長すぎ、フライホイールとシャフト受けがうまく取り付けられなかったので、元モーターと同じ長さになるよう軸をカットした。

電動ルーターのダイヤモンドカッターを軽く当てるだけで簡単に切断することができる(超硬鋼なので、ニッパーなど刃物では基本的に切断不可)。

モーターへのフライホイールの圧入は、このように万力を使うと簡単。左右均等に押し込めない場合は、狭くなってしまった側のモーター本体とフライホイールの間に金属板を挟むなどして調整する。

フライホイールを圧入したら、端子にリード線を半田付けしてアダプターに組み付け、コアレス版のモーター組を完成させる。

鉄コレ動力への組み戻し例。こちらはリード線が少し露出する程度で、特に無加工で戻すことができた。

TOMIX動力への組み戻し。アダプター上面に彫った溝を使ってリード線を脇に逃がしたが、椅子板を無加工で取り付けると若干浮いてしまうため、椅子板両脇の干渉部の切り取りが必要となった。

終わりに

完成したコアレス化動力ユニットは、近年のグリーンマックス製品のように、特に低速域の加減速が滑らかになるなど性能向上が見られたが、走行性能という観点では劇的な違いとまではいえないかもしれない。

ただ、元モーターが抱えていた動作不良発生への不安が大きく低減されるため、長期耐久性という面で安心を得ることができた。

価格面については、M-13モーターが1500円程度・IMONミニモーターが1200円程度するのに対し、コアレスモーター本体だけなら数百円で済むが、3Dプリントの手間・コストおよび加工の手間なども考慮が必要となる。

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