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首都圏電鉄と呼ばれる区間には、大きく分けて以下の路線(運転系統)が存在しています。
本来の路線戸籍と実際の電車運転系統が異なっている点は日本と同様です。
wikipediaの首都圏電鉄の説明も参考になります(路線図あり)。当ページの記述はこの路線図を見ながら読んでいただくと解りやすいかもしれません。
今回は各路線の概要と特徴を記述していきますが、それぞれの路線を掘り下げた記事も追って掲載していきたいと思います。また記事については一部事実確認中の項目もありますので、他の資料も併せてご覧下さい。
1号線はソウルメトロ1号線(地下鉄)およびKORAILの
日本でも例えば常磐緩行線を千代田線と呼ぶことがありますが、こちらでは「1号線」という総称は公式に使用されており、駅ナンバリングも会社を問わず通しで付番されています。料金体系が統一されていることもあり、利用する上でも会社の違いは気になりません。
路線図等に記載される際のラインカラーは紺色です(ソウルメトロ1号線単体のラインカラーは赤)。
1号線系統の活躍車両は多岐にわたるため、今後別項目として詳細に紹介したいと思います。
ソウル初の地下鉄として、日本の技術協力のもとに開通した路線です。成立の経緯から、設備面において日本鉄道との類似性が最も強く見られる路線ということができます。
ソウルメトロ所有路線の電化規格はすべて直流1500Vです。この路線は他のソウルメトロ各線と異なり、KORAILに合わせて複線が左側通行となっています。
ソウル駅~
なお、ソウル駅・清凉里駅はどちらも地下ですが、KORAILが所有するソウル駅・清凉里駅がそれぞれ地上に存在しており、連絡運輸規定のない別駅として扱われています(一部例外あり)。また「ソウル駅」は「駅」まで含めて正式な駅名です。つまり日本語で正確に表記すると「ソウル駅駅」あるいは「(KORAILの)ソウル駅前駅」となります。かつて京成千葉線に存在した「国鉄千葉駅前」駅と同じ考え方です。通常は「地下ソウル駅」などと呼ばれています。
路線は両端とも、駅を出てすぐ勾配となり、それぞれの地上駅を横目に地上に姿を現します。勾配を登り切ったところにデッドセクションがあり、地下鉄の直流からKORAILの交流への切り替えが行われます(これらはKORAIL所有区間)。
地下鉄線内のみの区間運転は基本的に行われていませんが、KORAILのソウル駅側から直通してくる列車には清凉里止まり、および入庫のための
車両は開業当初に投入された韓国国鉄と共通設計の抵抗制御車(1000系)、VVVF制御のステンレス車(新1000系)、およびKORAILからの乗り入れ車が使用されています。抵抗制御車は日本製の車両は全滅し、その後国産化されたグループのみが残っていますが、編成増強のために投入された中間車のみとなったため、現在は全編成の両端が先頭改造車となっています。
▲日本製の1000系最初期車。6連1本が車庫で保存されています。
京釜線は日本で言えば東海道本線に相当する韓国の最大幹線で、20世紀初頭に日本の渋沢栄一氏などの出資によって建設されました。ソウル~
このうちソウル~
また、2008年12月15日には、天安から分岐する
龍山~ソウル間では、電鉄線と列車線・回送線の3複線となっており、電鉄線はソウル駅手前でデッドセクションを経由したのち地下に潜ります。このため通勤電車は通常ソウル地上駅には入線しませんが、平日朝夕のラッシュ時にソウル地上駅発着のソウル~天安間急行電車が設定されており、ソウル地上駅にはこの列車専用のホームが存在します。このホームは他のホームやソウル地上駅の改札口には一切接続されておらず、地下ソウル駅の改札内通路と専用の階段で結ばれているのが特徴です。
このほか龍山発着の天安行急行電車がラッシュ時以外にも存在しますが、ソウル発着の急行電車とは停車駅が異なっています。またどちらの急行電車も大半の区間で電車線ではなく列車線を走行するため、通勤電車の高速運転を味わうことができます。
龍山~九老間は電鉄の路線別複々線+列車線の合計3複線となっています。電鉄線の複々線は主に緩行・急行で使い分けられていますが、光明シャトル(各駅停車)は急行線を走行します。ただし、前述のソウル(地上)発着以外の急行列車は、ソウル(地下)~九老間は各駅に停車します(ソウル地上駅発着の急行列車は列車線を走行)。
九老~天安間でも急行列車は列車線を走行しますが、停車駅では電車線にある電鉄対応ホームへの発着のため、各駅手前の渡り線で電車線への転線が行われます。
KORAIL側の車両は抵抗制御車の1000系、VVVF制御の5000系が活躍中(1号線系統各線に共通)です。1000系は日本製および初期製造のグループの先頭車はすでに全廃され、現在残っているのは車体デザインを大幅変更した「中期抵抗車」と「後期抵抗車」が大半となっています。
▲KORAILの1号線主力、1000系「中期抵抗車」(左)と5000系(右)。合計すると100本以上が活躍します。
▲5000系中期増備車。「トングリ(丸いものの意味)」の愛称で知られています。
▲5000系最新型「マティズ」。同名の自動車に似ていることから付けられた愛称です(ただし公式のものではありません)。
京仁線はその名の通りソウル~仁川間を結ぶ路線で、路線の建設時期は京釜線より古く、朝鮮半島で一番最初に開業した路線です。
現在旅客営業列車はすべて電鉄化され、ムグンファ号・セマウル号は運行されていません(貨物列車は運転されています)。
京釜線の
▲地下鉄1号線と一緒に投入された「初期抵抗車」1000系。この前面を持つ先頭車はすでに全廃されています。
京元線は路線戸籍上は京釜線の龍山から分岐し、漢江沿いに北東に進み、清凉里・
しかし、電鉄化により運行系統が分けられ、電鉄最北端の逍遥山から南下してきた電車は回基~清凉里(地下)間で地下に潜り、地下鉄1号線に直通運転となります。また回基~龍山間については、清凉里(地上)と
このため地下鉄~清凉里(地下)~回基~逍遥山間が首都圏電鉄1号線となっており、龍山~清凉里(地上)~回基~八堂間は中央電鉄線と総称されています(後述)。
なお逍遥山~新炭里間は非電化ローカル線となっています(電鉄とは別料金体系、ローカル列車自体は逍遥山のひとつ手前の
話を戻しますと、1号線の範疇に含まれる清凉里(地下)~逍遥山間については、清凉里~東豆川間が複線、東豆川~逍遥山間が単線です。急行電車も運転されていますが東豆川止まりとなっています。
ソウル~釜山間を結ぶ看板列車KTXは、途中区間の一部は専用に建設された高速新線を走行しますが、ソウル・釜山近辺など残りの区間では在来線の列車線をそのまま利用しています。
ソウル側では京釜線の
高速新線に入って最初の駅が光明ですが、光明駅近辺では新興住宅地の造成が行われ、地元誓願の結果、この駅まで電鉄の通勤電車を直通させることになりました。これが光明シャトルと呼ばれる列車です。
光明シャトルに充当される車輌は、高速列車の間を縫うため高加減速が要求されること・途中に28‰区間があることから、1号線用の編成でも性能の良い5000系後期車「マティズ」が優先充当されているという情報があります(情報確度不明)。確かに見ている限りではマティズばかりが充当されていました。
運行形態は龍山~光明間の区間運用(各駅停車)とされており、他路線への直通などは行われていません。
日本でいえば並行在来線と別区間を通る新幹線の途中駅(新横浜、岐阜羽島、新神戸、本庄早稲田、上毛高原、くりこま高原など)まで並行在来線から普通電車を直通させているようなもので、在来線と高速線の規格が共通化されている韓国ならではの施策といえます。
なお、導入当初から使用されていた他線区と共通の10両編成では輸送力が過剰(現状かなり空気輸送)であること・途中経路での平面交差や龍山駅での折り返しなどで他の重要線区のダイヤへの支障があることなどから、2008年12月1日から編成を4連化および運行区間を龍山から途中の
新たに使用されている4両編成は、後述する中央線の編成短縮などで捻出された車両などを集め、先頭車の新造や組成変更を行い、新たに319000系という新形式が与えられています。外観は5000系最新バージョンとほぼ同様ですが、ワンハンドルマスコンの採用・車内ドア上への液晶モニタ設置などの変更点があり、また編成中2両の中間電動車が両方ともパンタグラフ搭載になっているといった違いが見られます。
この特徴的な319000系の写真はwikimediaで閲覧することができます。
▲広大な光明駅。両端から通勤電車ホーム・KTXホーム・KTX通過線の順に配置されています。
▲光明駅で発車を待つ龍山行きシャトル列車。ヨーロッパ式の架線柱との違和感が目立ちます。この姿(10両編成および龍山行き)は現在は見られなくなりました。
2号線はソウルメトロ2号線(メインとなる環状線および2本の支線)だけで構成される運転系統で、KORAILは関連していません。
この路線は右側通行です。韓国の地下鉄はソウルメトロ1号線およびKORAIL所有区間(3号線以外)を除いて右側通行となっているため、日本人の利用や撮影の際には間違えないように注意が必要です。
ラインカラーは緑色となっています。
2号線の根幹を成す路線で、
地上区間あり・高架区間あり、漢江超えの長大鉄橋ありとバラエティに富んだ沿線風景を楽しむことができます。
使用される車両は1号線とは異なる形式(2000系・新2000系)の10両編成となっており、1号線と同様、車両面でのバラエティは豊かです。
▲2号線のかつての主力、旧2000系オリジナルグループ。日本人にも馴染みやすいデザインです。
▲4号線用旧4000系を移籍・編入したグループ。最大幅3160mmの台形車体が特徴。GECチョッパ車と呼ばれます。
▲現在の主力、新2000系。ビード車体とビードレス車体の2タイプが存在します。
環状線の聖水駅から分岐する支線で、東京でいうと丸ノ内線の方南町支線のような路線です。使用される車両も本線とは異なり4両編成の区間運転のみとなっています。
この路線の沿線には2号線の
支線の車両は本線用の2000系の4両編成バージョンが永く使われていましたが、近年になって本線用の新形式である新2000系を聖水支線専用の4両編成としたものが投入され始めています。
▲聖水支線用の4両編成新2000系。緑色・曲面デザイン・コンパクトな編成は東急池上線を連想させます。
環状線の
この路線の沿線にも2号線の新亭車輌基地が存在しており、新道林から2号線環状線用の車両が回送列車として乗り入れてきます(1号線車両は入ってきません)。
新亭車輌基地はマンションが建ち並ぶ人工地盤の下に建設されており、都営地下鉄三田線の志村車両検修場を思い起こさせます。この車庫には1号線開業時に投入された日本製の車両が1編成保存されています。
現在活躍するのは新亭支線用2000系6両編成で、本線用2000系のうち比較的新しい中間車を集め、両端を先頭化改造した編成となっています。
▲支線区向け2000系。旧2000系中間車の先頭改造車で、1号線向け車両と同一の前面デザインとなりました。
首都圏電鉄3号線はソウルメトロ3号線およびKORAIL
一山線は地下鉄3号線の延伸としての性格が強く、路線規格も地下鉄3号線に合わせたことから、KORAIL所有路線としては唯一の全線直流電化・全線右側通行であるほか、車両もソウルメトロと同一の形式(ただし3号線用のメトロ車両とは異なる)が導入されています。路線も大半が地下です。
ラインカラーはオレンジ色です。
水西~紙杻間がソウルメトロ3号線になります。
半分ほどの列車は水西から紙杻のひとつ手前の
KORAIL一山線との境界となる紙杻駅は、ホーム中央付近を境としてソウルメトロとKORAILがそれぞれを所有していますが、ホームの作りやサイン類までもが境界部分で分かれているという、日本の境界駅ではあまり見られない構造となっているのが特徴です。
ソウルメトロ所属車両は3000系で、車体幅3160mmのヨーロピアンデザインな大型ボディを持っています。同一設計車は4号線でも活躍していました(旧4000系)が、交流電化路線との乗り入れ開始に伴い2号線に移籍・2000系に編入されています。
現在、水西から5号線と接続する
また、まもなく新車である新3000系が投入される予定となっています(ニュース記事)。
メトロ3号線を延伸する形で新興住宅地(一山ニュータウン)へ向かう路線です。KORAIL所有ではありますが、純粋な通勤電車専用路線であることや、前述の通り右側通行・直流電化であることが大きな特徴です。
朝夕には、大化から紙杻のひとつ手前の
KORAIL所属車両は3000系と呼ばれますが、メトロの3000系とは別形式です。路線がメトロ3号線とほぼ一体化していることから、検査などもすべてメトロへ委託されており、この関係でメトロ4000系と共通設計の車両となっています。
KORAILにはディーゼル機関車に3000番台が付番されていたため、本形式は3070から付番されており、3070系と呼ばれることもあります。
▲KORAIL3000系。2000系や5000系と異なり、ソウルメトロ4000系と共通設計の直流専用車です。
首都圏電鉄4号線はソウルメトロ4号線およびKORAIL
タンゴゲ~南泰嶺間がソウルメトロ4号線となります(「タンゴゲ」には漢字表記がありません)。メトロ2・3号線と同様、右側通行・直流電化の路線です。
果川線との境界駅・南泰嶺のひとつ手前である
ソウルメトロ所有車両には直流専用車(4000系)とKORAIL直通対応の交直流対応車(4050系)が存在しており、タンゴゲ~舎堂間区間運転には主に直流専用車が充当されます。
両形式はパンタ周りを除いてほぼ同一の外観をしていますが、KORAILに乗り入れる4050系では前面連結器脇にエアホースが取り付けられている(非常時に機関車で救援するため)ので見分けることができます(地上区間であれば)。
今後の予定として、前述の3号線に投入予定となっている新3000系は33本導入予定のうち11編成が交直流対応になるという情報があり、これが本当なら、直流専用の4000系と今回新造される交直流車の交換が行われる可能性が高いでしょう。また4号線自体の全線交流化という噂もあるようなのですが詳細は不明です。
▲直流専用の4000系。3号線のKORAIL3000系の設計ベースとなりました。
▲交直流の4050系。1号線の新1000系の設計ベースとなりました。
▲同じ4000系ですが、一部編成は方転したまま営業しているようです(車番に注目)。いまのところ原因未解明です。
▲4050系の逆転編成。製造メーカー差というわけでもないようです。
南泰嶺~衿井間がKORAIL果川線となります。
地下鉄(4号線)と郊外路線(安山線)を結ぶ路線である点、衿井を除いて全線地下となっている点、ほぼ全列車が安山線に直通している点など、東京の東急田園都市線に対する新玉川線に近い性格を持った路線です(新玉川線は路線名統合により消滅)。
KORAILは左側通行・交流電化となるため、境界駅の南泰嶺と次のソンバウィ駅の間で地下トンネルの立体交差により進行方向が逆転、およびデッドセクションを通過します。韓国鉄道の旅客営業路線における交直デッドセクションは、ここと地下鉄1号線の両端にある3箇所のみとなっています。
衿井~烏耳島間がKORAIL安山線となります。果川線と異なり、田園風景あり高架区間ありと車窓の変化に富む路線です。
果川線開通前は衿井駅で接続する京釜電鉄線からの直通運転が行われていました。現在は営業での直通運転は全廃されましたが、終点・烏耳島にある
この路線用に活躍するKORAIL所属車両は2000系と呼ばれ、1号線系統で活躍する5000系の設計ベースとなったステンレスVVVF車です。増備途中から前面のみ変更され、「トングリ」と呼ばれるデザインになりました。外装はラインカラーである水色ベースとなっています。
安山線は現在、建設中の
▲KORAIL2000系。5000系の設計ベースとなった車両です。
▲2000系後期車。側面はそのまま、前面デザインのみ「トングリ」に変更されています。
5号線から8号線まではソウル都市鉄道公社所有の地下鉄路線となります。他線区との乗り入れは行われず、すべての路線がワンマン・ATOとなっているのが特徴です。
これらの路線は、いずれ改めて紹介を行いたいと思います。
中央電鉄線は1号線の項目で紹介した京元線龍山~清凉里間、および中央線の電鉄区間(清凉里~八堂間)を一体化した運転系統の総称です。
戸籍上の「中央線」は清凉里から朝鮮半島東岸の都市・
車両は1号線系統と共通の形式が用いられますが、直通運転などは現在行われていません。ワンマン運転となっているほか、編成も中央電鉄線専用の8両編成となっており、これには5000系の交流専用バージョンである6000系も含まれています。
さらに、2008年にはワンハンドルマスコンやドア上液晶モニタなど、1号線「光明シャトル」用の319000系と似た装備を持った321000系が登場しているようです。外観は6000系とほぼ変わりませんが、今後の増備は321000系となって進められる見込みです。
ラインカラーはエメラルド色となっています。今後の予定として、2008年12月29日に
▲5000系中央線向け編成。最終ロットのみで構成され、8両編成・ワンマン対応となっています。
▲6000系。中央電鉄線向けに製造され、5000系最終増備車の直流機器のみ未搭載とした交流専用バージョンです。
盆唐線はKORAILでも新しく、現在も建設が進められている路線で、地下鉄2号線と接続する
全線が交流電化となっていますが、いわゆる「地下鉄」で交流電化されている路線(果川線・盆唐線)は世界的にも珍しいとされています。
ラインカラーは黄色で、所属編成の2000系もラインカラーに合わせて黄色ベースの外装とされています。果川・安山線と同一形式ですが、
などが果川・安山線用編成と異なっています。
現在も路線両端の延伸が進められており、最終的には地下鉄2号線・地下鉄5号線・中央電鉄線と接続する
▲盆唐線用2000系。こちらは交流専用で、ワンマン運転のための増設ワイパーも特徴です。
▲盆唐線用2000系後期車。果川・安山線用の「トングリ」とは異なり、側面も5000系後期増備車と同一構造に変更されました。
仁川地下鉄線は正式には仁川広域市地下鉄公社1号線で、ソウル特別市の西方にある仁川広域市の地下鉄線ですが、1号線と接続していることもあり、首都圏電鉄に含まれています。料金体系も共通です。
なお、仁川国際空港へのアクセス路線ではありません(空港に直接乗り入れているのは空港鉄道「A'REX」のみ)ので利用の際は注意が必要です。
▲仁川地下鉄1000系。「トングリ」の元祖となった車両と言われています。
▲KORAIL・ソウルメトロとは異なり、18M4扉となっています。車幅も日本型と同じ2800mmです。